1991年16刷り。みすず書房刊・単行本。定価3399円。経年の割にまずまずの状態です。
著者は、すでに20代の初めに量子力学確立の上に大きな貢献をし、その後の物理学ならびに哲学・思想に大きな影響を与えているが、その後も今日に至るまで素粒子物理学の発展にいくつかの大きな足跡を残している。本書は、著者のこれらの偉大な着想が、いかにその時々の物理学の巨星たちとの対話によって播かれ、育ち、開花していくかを克明に伝え、また両大戦の戦後・戦中の狂気や荒廃に満ちたドイツにあって、研究者・教師として、人間として、一国民として、著者がいかに行動してきたかを如実に示す。
「二十世紀の初期は物理学の英雄時代であった。ハイゼンベルクは、英雄の一人として登場した。知的世界における英雄は単なる専門家ではなく、多かれ少なかれ思想家でもあった。この本に登場する英雄たち、アインシュタインもボーアもシュレーディンガーも、それぞれの思想を自分で構築した人であった。その中で今日では、ハイゼンベルクだけが健在である。素粒子物理学は、まさに乱世となりつつあるように見える。だからといって昔のような英雄時代の到来を望むのは、アナクロニズムかも知れない。しかし、物理学における新しい乱世が、多くの研究者を久しく遠ざけていた思索の世界へと引き戻す効果があるかも知れないことを、私は期待したいのである。」
(湯川秀樹・序文より)